和の匠・美術監督 池谷仙克の映画

2022/9/7(水)

2022年10月7日(金)~27日(木)
UPLINK吉祥寺

「画面に映るすべてが美術の仕事」ーーー池谷仙克(いけやのりよし)
10月25日で七回忌を迎えるにあたり、池谷が携った多くの映画作品の中から厳選した5作品を上映。

 

京都の陰翳礼讃 「無常」実相寺昭雄
沖縄の風土 「さらば箱舟」寺山修司
大正浪漫 「夢二」鈴木清順
江戸の美 「写楽」篠田正浩
唯一の監督作品「床屋」は劇場初上映

 

それぞれを大胆なデザインで一気に虚構の中へ引き摺り込み、繊細に、粘り強く、
『画面に映るものすべてが美術の仕事』をモットーに世界を構築し、
繰り拡げていく美術監督 池谷仙克 匠の技。
ご堪能いたでけたら幸いです。

 

10月1日より劇場展示スペースにて上映作品のデザイン画を展示
上映作品にゆかりのある方々のトークイベントも開催

池谷仙克 IKEYA Noriyoshi

1940年8月31日東京都八王子生まれ。武蔵野美術大学芸能デザイン科に第1期生として入学、在学中に美術監督の成田亨と出会う。卒業後、成田の誘いで円谷特技プロダクションの作品に参加。子ども番組に興味はなかったが、実相寺昭雄監督の「ウルトラマン」第15話(66〜67)の試写後、クオリティーの高さに驚き、特殊美術助手として同作品に関わる。「ウルトラセブン」(67~68)では後期から怪獣とセットのデザインを兼務する。70年に実相寺監督の長編映画第1作『無常』で初めて本編の美術監督を任され、映画デビュー。以降は実相寺作品のほとんどの美術を任される。篠田正浩監督の『写楽』と『瀬戸内ムーンライト・セレナーデ』で日本アカデミー賞最優秀美術賞を2度受賞。数々の映画やテレビ、舞台、CM、MVの世界を縦横無尽に行き来し、作品ごとの世界観を引き出して具現化する仕事を何よりも愛していた。2016年10月25日、76歳没。

上映作品

無常[1970年/モノクロ/144分/初DCP化上映 ※R18指定]

日本のエロティシズムと無常感に迫る
実相寺昭雄監督と池谷仙克の長編映画デビュー作!

琵琶湖近くに住む旧家の長男・正夫は父の跡を継ぐことを嫌い、大学にも行かずに仏像の魅力に取り憑かれていた。美しい姉・百合も縁談を断って母を困らせていた。広い屋敷に2人だけになった時、正夫と百合は一線を越えてしまう…。
近親相姦という反社会的な関係と日本的な精神風土に迫った渾身の衝撃作。実相寺昭雄は当時32歳、映画の美術を初めて担当した池谷仙克は当時29歳であった。

 

◆第23回ロカルノ国際映画祭 金豹賞受賞
監督・製作:実相寺昭雄 脚本:石堂淑朗 撮影:稲垣湧三 美術:池谷仙克 音楽:冬木 透 出演:田村 亮、司 美智子、佐々木 功、岡田英次
実相寺プロダクション+日本アート・シアター・ギルド作品

©1984劇団ひまわり/テラヤマ・ワールド/東宝

さらば箱舟[1984年/カラー/127分/DCP]

マルチな才能で時代を駆け抜けた寺山修司が
死生観と滅びゆく文化を描く問題作!

南国の孤島にある百年村を支配する時任家の当主は、少年時代に村中の時計を盗んで穴に埋めてしまう。旅芸人の捨て子の捨吉と貞操帯を付けたスエは夫婦になるが、夫婦の契りは結べない。村にはこの世とあの世を繋ぐ穴があり、村人はのんきに穴の存在を受け入れている。ある日、時計を売りに来た男と村人たちが掟を巡り争いが始まって…。
生と死、時間と空間が錯綜する寺山ワールドは本作の公開直前に寺山が死去、遺作となった。

 

◆第38回カンヌ国際映画祭 コンペティション部門出品 ◆第36回ベルリン国際映画祭 フォーラム部門出品
監督:寺山修司 脚本:岸田理生、寺山修司 撮影:鈴木達夫 美術:池谷仙克 音楽:J・A・シーザー 出演:山崎 努、小川真由美、原田芳雄、天本英世
劇団ひまわり+テラヤマ・ワールド+日本アート・シアター・ギルド作品 配給:東宝
※ガブリエル・ガルシア=マルケスの「百年の孤独」の映画化として企画・撮影されたが、完成後に原作者からのクレームから公開が延期、原作クレジットを外して改題したことで公開された。

©1991

夢二[1991年/カラー/128分/初DCP化上映]

『ツィゴイネルワイゼン』『陽炎座』に続く
鈴木清順監督の “大正浪漫3部作” 完結編 贅沢が炸裂する美しさ!

駆け落ちを約束した恋人を待つ竹久夢二は、隣村で妻と愛人を殺した殺人鬼が山に逃げた噂を耳にする。芸術家として苦悩する夢二は悪夢にうなされても、次々に女性と関係を持つ…。
独特の映像美と浮世離れした物語で見るものを幻惑する清順ワールド。「陽炎座」に続いて池谷仙克は凝りにこった色彩、死の臭いに満ちた迫力ある美術を担当。飄々とした作風と和の匠・池谷仙克が見事にマッチした逸品である。

 

◆第44回カンヌ国際映画祭 ある視点部門出品
監督:鈴木清順 脚本:田中陽造 撮影:藤澤順一 照明:上田成幸 美術:池谷仙克 出演:沢田研二、坂東玉三郎、毬谷友子、原田芳雄
荒戸源次郎事務所 作品 配給:リトルモア

©1995「写楽」製作委員会

写楽[1995年/カラー/138分/初DCP化上映]

浮世絵界に突如現れた謎の絵師・写楽が天才絵師・歌麿に挑む
豪華キャストの歴史ミステリー大作!

約140種の役者絵と相撲絵を残して消えた写楽の正体は誰だ? 写楽の才能に嫉妬の炎を燃やす歌麿が写楽と花魁の花里を巡って繰り広げる…2大天才絵師の恋と葛藤。
写楽研究家であったフランキー堺が恩師・川島雄三監督との約束を果たすべく、篠田正浩監督に託して完成させた執念の逸品。池谷仙克はアートディレクターの浅葉克己を迎えて広島みろくの里に吉原の大オープンセットを作った。

監督:篠田正浩 原作・脚本:皆川博子 撮影:鈴木達夫 美術:浅葉克己、池谷仙克 音楽:武満 徹 出演:真田広之、フランキー堺、葉月里緒菜、岩下志麻
西友+TSUTAYA+堺綜合企画+表現社+テレビ朝日作品 配給:アスミック・エース

【特別上映】床屋 実相寺昭雄のミステリーファイル[不思議館Ⅰ]より第2話 [1992年/カラー/28分/BD上映]

美術監督・池谷仙克が短編ドラマの演出を手がけた
唯一の監督作品を特別上映!

実相寺昭雄監督が企画・製作したオリジナルビデオシリーズの第1弾。全3話収録でオムニバス仕立ての怪奇ミステリー作品。第1話「かぐや姫」は大木淳吉、第3話「受胎告知」は実相寺昭雄が監督を担当。各話の間に寺田 農扮する夢先案内人役が登場して実にユーモラス。
池谷仙克は第2話「床屋」を初演出。男が失踪した妻を探しにさびれた漁村の床屋を訪れる。床屋の主人に妻のことを尋ねるも手掛りはない。やがて男は記憶の白昼夢を見てしまう…。

監督:池谷仙克 脚本:油谷岩夫 撮影:中堀正夫 美術:富田麻友美 音楽:淡海悟郎 出演:大杉 漣、新舩聡子、佐藤康治、奥村公延
提供:ローランズ・フィルム

ウルトラの世界から映画の美術監督へ。

10月に7回忌を迎える美術監督 池谷仙克は、実相寺監督「無常」で映画と出会い、寺山修司監督・鈴木清順監督・篠田正浩監督達に“和の美”への造詣の深さを請われて美術監督の道へ。
篠田監督に「大変厄介な監督達との仕事であったと思いますが、一つも愚痴をこぼさずに何の困難も困難と思わずに自分の仕事を成し遂げている強烈な不屈な精神力の持ち主であると思い知りました 」と言わしめる“和の美”への造詣の深さと探究心。
江戸川乱歩や京極夏彦原作の映画作品や遺作となった『銀魂』など幅広い“和の美”を追い求めてきた“和の匠・美術監督 池谷仙克の日本の美”をご堪能下さい。

主催:池谷事務所
上映協力:東宝、リトルモア、表現社、アスミック・エース、ローランズ・フィルム、キングレコード
展示協力:奈良堂

Loading...